2008年09月01日16:22
『FORTUNE ARTERIAL』紅瀬桐葉(裏)ルート・2このエントリは続きものです。
読む前に、上のエントリから読まれて下さい。
『FORTUNE・ARTERIAL』紅瀬桐葉(裏)ルート・3
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かなでさんは、駐車場の司と翼ちゃんめがけて、猛ダッシュした。
【かなで】「ね、ね、へーじ、何で増えちゃったの?
うわあ、こっちのへーじ、女の子だぁ!」
翼ちゃんは、今日はスカートではなく、司と同じようにジーンズを履いている。
上着もラフな感じで、パッと見た感じは、本当に司と見分けが付きにくい。
かなでさんは主人が帰って来たのを喜ぶ子犬のように、司と翼ちゃんの周りをぐるぐる回ってる。かなでさんに尻尾があれば、千切れるほど振っていただろう。
司と翼ちゃんは、かなでさんにまとわりつかれながら、テーブルまで歩いて来た。
【かなで】「すごいよ、みんなー。
へーじ、分裂して、女の子になっちゃってるよ。
やっぱり、悪の秘密結社に捕まって、改造手術を受けちゃったりしたの?」
【司】「違う。ある日輝く巨大な円盤に捕まって、気づいたら、コイツがいたんだ。」
司が翼ちゃんをチラッと見る。
【翼】「はじめまして。私は、地球の高度有機生命体とコンタクトを図るために作られたアンドロイドです。八幡平司の生命情報を基に作製されていたのですが、アクシデントで女性型になってしまいました。ふつつかものですが、よろしくお願いいたします。」
【かなで】「ほ、ほえー。」
かなでさんがポカーンとしている。口が半開きだ。
オレと桐葉は笑いを堪えるのに必死だ。
陽菜は、苦笑している。
【かなで】「すごいよ、へーじ。ね、ね、UFOってどんな感じだったの?」
【司】「全力で嘘だ。」
あっさり、言い放つ司。
【司】「こっちは双子の妹の翼。
SFとかオカルトのマニアで、話が荒唐無稽だから気をつけてくれ。」
【翼】「もー、司。あっさり最高機密をばらさないでよ。」
もー、と言いながら頭をぽりぽりと掻く翼ちゃん。
【翼】「そういうわけで、司の妹の八幡平翼です。
いつも司がお世話になってます。同窓会にお邪魔しちゃってすみません。」
翼ちゃんは、そう言って、はきはきとみんなに挨拶した。
元が司にそっくりなので、違和感が無い。
あっという間に雰囲気に溶け込んだ。
【かなで】「しっかし、びっくりしたあ。ホントに似てるね。」
【陽菜】「本当。八幡平君にそっくりなのに、かわいくて不思議な感じ。」
【司】「そう言われるのが嫌だから、ずっと隠し通してきたんだ。
同窓会が珠津島であるって言ったら、絶対ついてくるとか言い出しやがって。
言い出したら、聞かないヤツだからなあ。」
あきらめ口調の司が言う。
それにしても、「絶対ついてくる」っていうのはなんか理由でもあったんだろうか。
司の友達に会いたかったのか。
それともこの島に来たい理由があったのか。
桐葉が司と翼ちゃんにお茶を差し出した。
翼ちゃんと司は桐葉にありがとう、と言ってお茶を飲む。
【司】「昨日も大将の家でご厄介になったんだけど、大将に翼が大ウケでさ。
またいつでも来い、だってよ。」
ため息交じりの司。
【陽菜】「でも、二人、仲良いよね。とっても楽しそうだよ。」
【司】「違う。俺が、一方的に弱ってる。」
司の口調は嫌そうだが、どこか嬉しがっている感じがする。
妹があちこちで気に入ってもらえるというのは、まんざらでも無さそうだ。
【孝平】「司、昼飯は食べたのか?素麺作ったぞ。」
【司】「お、新婚さんの手料理か。頂くとするか。」
【翼】「えー、支倉君って学生結婚!?すごーい。アツアツなんだね。」
【孝平】「まだ結婚してないって。司、誤解されてるだろ。登場時から混乱を招いてるんだから、これ以上は混乱させないでくれよ。」
俺は大慌てで否定して、桐葉と一緒に司と翼ちゃんの分の素麺を準備した。
桐葉は耳まで真っ赤になっていた。
【司】「悠木と寮長は食ったのか?」
【陽菜】「うん。たくさん食べちゃって、もう、お腹一杯。
まだたくさんあるらしいから、八幡平君も翼ちゃんもいっぱい食べてね。」
【翼】「はい、遠慮なく、頂きます。」
翼ちゃんが屈託の無い笑顔でそう言う。
本当にかなり食べそうだ。作った方としては、嬉しい。
司と同じで、落ち着く笑顔だと思った。
【かなで】「もしもし、へーじ!?」
【司】「な、なんだ?」
【かなで】「あのねえ、今更『寮長』は聞き捨てなりませんなあ。
もう2年近く前に寮長じゃなくなってるんだから。
もう少し呼び方があるでしょう。」
【司】「じゃあ、かなでんでん?」
お茶を噴出しそうになった。
司。卒業してから笑いのセンスが良くなってる。
【かなで】「なんでそんな変な呼び方になるのさ!?」
おい、司、「へーじ」って呼んでるかなでさんがボケてるぞー。
ここはツッコむところだ。
【かなで】「あーもういい。『かなで』って呼んでよ。」
うーん、確かに。
歳はひとつ上だが、明らかにかなでさんの方が子供っぽい。言ったら怒られるが。
身長は20センチ以上は司が高いし、全然違和感無いぞ。
司は少しためらって、言った。
【司】「じゃあ・・・かなで。」
【かなで】「うむ、よろしい。」
「かなで」で落ち着いたようだ。
【陽菜】「ね、翼ちゃん。」
【翼】「なーに?」
翼ちゃんがちゅるんと素麺をすすりながら、応える。
【陽菜】「ちょっと気になったんだけど、『絶対この島に来たい』っていうのはなんか理由があったの?」
それは俺も聞きたいって思ってたところだ。陽菜、よく聞いてくれた。
翼ちゃんは目をキラキラさせて、待ってましたとばかりに話し始めた。
【翼】「そうなのよ!この島、不思議が一杯なの。
鬼の伝説とか、病気が治る泉とかがあったんだよね。
司が通ってる学院があるから、前から注目してたの。
そしたらね、この前、極めつけの情報を掲示板で見つけちゃったんだ。」
翼ちゃん、バリバリのマニアだ。
【翼】「一週間くらい前に、珠津島の沖合いで女性の水死体が発見されたの知ってる?
それがどうも、普通の水死じゃないと私は睨んでるの。」
水死体?話が穏やかじゃなくなってきた。
【翼】「ある掲示板に、死んだ女の人が『吸血鬼』に血を吸われているところを見たっていう書き込みがあったのよ。
私、その書き込みにピキーンと来たわ。
絶対、この書き込みは本当だってわかっちゃったの!
これは絶対に珠津島に行くしかないって思ってたら、司が珠津島に行くって言うでしょ。
で、ついて来たっていうわけ。」
俺は、たぶん、しばらくの間、凍りついてたと思う。
吸血鬼が血を吸って、その人が死んだ?
吸血鬼って、まさか、瑛里華!?
伊織先輩!?
連絡が取れないのは、何かヤバイ事になっているからなのか?
しばらくして我に返る俺。
驚きと混乱を翼ちゃんに悟られまいと最大限に努力した。
桐葉を見ると、桐葉も何かを感じているようだ。
しかし、すぐに氷の表情に戻った。
【翼】「ね、ワクワクするでしょ!
この時代に、吸血鬼がいるかもしれないんだよ!!」
翼ちゃんは、興奮のあまり、俺や桐葉の表情の変化には気づいてないようだ。
司がため息をつく。
【司】「コイツのオカルト好きには、正直ついていけない。」
【陽菜】「うーん、吸血鬼って、いるのかなあ。
どうだろ、孝平君。」
【孝平】「そうだな・・・、いないんじゃない?
翼ちゃん、俺は吸血鬼なんていないと思うんだけど、もし本当にいるんだったら、危ないと思うよ。
あれこれ探し回ってたら、ガブッってやられちゃうかも知れない。
吸血鬼がいると思うんならなおさら、あんまり危険なことしちゃいけないよ。」
俺は水死の事件を知らなかった。
だけど、確信めいたものがあった。
その女の人は、たぶん吸血鬼に血を吸われている。
誰が吸ったのかはわからない。
そして、この事件は本当に危険だと本能がそう告げているような気がした。
【かなで】「ねえねえ、白ちゃんとせーちゃんはいつ来るの?」
かなでさんの声で、緊張しかかっていた空気がほぐれる。
【孝平】「あ、3時頃って言ってました。
ぼちぼち、バーベキューの準備をしましょうか。」
バーベキューでちょっと早めの夕食を食べながら、積もる話をしようっていうのが今回の同窓会のメインだ。
今、1時をちょっとすぎたところだ。
買出しとかもしないといけない。
【かなで】「そだね。よし、まずは買出しに行こう。
みんな、車に乗って下さーい。」
司と翼ちゃんが、残りの素麺をほとんど平らげてくれていた。
翼ちゃんは、ごちそうさまでした、本当においしかったです、と言いながら片付けを手伝ってくれた。
こう言われると、作りがいがある。
バーベキューも頑張ろう。
片付けを終えて、みんなで車に乗り込む。
運転はかなでさん。少し心配。
助手席に司。
2列目に俺と桐葉、3列目に陽菜、翼ちゃんが乗り込んだ。
【かなで】「さあ、しゅっぱーつ。」
意外と普通のスタートだ。
だが・・・。
【かなで】「むむ、その割り込みはないんでないかい?」
【かなで】「あー、おばあさんが渡ろうとしてるのに、あの車、ブーンて行っちゃったー。あぶなーい。」
【かなで】「あの車、一旦停止していないよ。この風紀シールを・・・」
かなでさん、まだ持ってたのか、風紀シール。
いや、そういうことじゃなく、徐々にヒートアップしているぞ、かなでさん。
スピードがだんだん上がっているし、ハンドルさばきが荒くなっている。
このまま行ったら、かなでさんの方が危ない。
風紀委員と寮長をやってたかなでさんは、いまだにその気質が変わっていないようだ。
【司】「かなで。落ち着け。みんな乗ってるんだぞ。」
司がぴしゃりと言った。
【かなで】「あ、ご、ごめん。つい、熱くなっちゃって。そうだよね。
まずは自分が安全運転しなきゃね。」
【陽菜】「もー、おねーちゃん。みんなに迷惑かけたらダメだよ。
ゴメンネ、みんな。
八幡平君、ありがとう。」
すまなそうに陽菜が言う。
司に注意され、かなでさんは落ち着きを取り戻した。
俺達一行は、大事に至らずスーパーにたどり着いた。
【かなで】「よし、総員、配置につけー。
目標、牛。
おねーさんのおごりだから、買い占めちゃいなさい!」
どこから取り出したのか、かなでさんが軍配を持って振っている。
総員は、かなでさんから距離を保ちつつ、知り合いでないような素知らぬ顔で買い物をする。
桐葉が一番早く距離を取っていたのが笑えた。
【かなで】「あ、へーじ。お肉ここだよー。」
店内に響き渡る声。
司が発見され、捕獲された。すまん、司。あとは頼んだ。
【陽菜】「もう。おねーちゃんったら、恥ずかしい。」
陽菜が耳まで真っ赤になっている。
【孝平】「かなでさん、張り切ってるな。」
【陽菜】「そうなの。今日のために貯金もしてたみたい。
ちょっと恥ずかしいけど、許してあげてね、孝平君。」
【孝平】「もちろん許すけど、ちょっぴり恥ずかしい。とりあえず、司に任せよう。」
【陽菜】「八幡平君には悪いけど、そうしよっか。二人、結構、良い雰囲気だもんね。」
陽菜が微笑む。
俺はうなずいて買い物を続けた。
【翼】「あ、花火だ。」
翼ちゃんが花火コーナーの前で立ち止まった。
陽菜と桐葉も立ち止まる。
【孝平】「そう言えば、花火は買ってなかったな。買って行って、みんなでやろっか。」
桐葉はじっと花火を見つめていた。
一度桐葉と線香花火をやった事がある。
桐葉は線香花火を見て、顔を輝かせていた。
いつもの表情とは違って、ずいぶん幼く見えた。その時の表情が忘れられない。
桐葉は普通の子供として、子供時代をすごせていたのだろうか。
そして、子供の頃の記憶はどれくらいあるのだろうか。
記憶を無くしているから、子供のように顔を輝かせていたのではないだろうか。
桐葉の記憶の事を考えると、胸が切なくなった。
俺は線香花火が入っている、手に持つ花火のパックをいくつか選んだ。
【翼】「これが良いかもー。」
翼ちゃんは、そう言って、「バイオレンス・メテオバーン・オブ・ジェノサイド」と書いてある打ち上げ花火を持っていた。いや、正確に言うと抱っこしていた。なんという大きさだ。
そして、どういうネーミングだ。
翼ちゃんの目はキラキラしている。もう、何を言っても聞かないだろう。
あきらめて、抱っこしている花火を買う事にした。
【かなで】「みんな、どこ行ってたの。もうお肉買い占めちゃったよー。」
言葉どおり、洒落でない量のお肉が、司の持つカートに詰まっていた。
司は、かなでさんに振り回され、心なしか痩せているようだ。
俺はお疲れさまと微笑んで、司の肩を叩いた。
【かなで】「みんな遠慮せずに食べてね。
支払いは、おねーさんに任せなさい!」
かなでさんは拳を作って、胸を叩いた。
大量に買い込んだ肉を満載した買い物袋と、見た事もないような大きな打ち上げ花火を積み込んで、俺達はスーパーからキャンプ場へ戻った。
『FORTUNE・ARTERIAL』紅瀬桐葉(裏)ルート・4

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