『FORTUNE・ARTERIAL』紅瀬桐葉(裏)ルート・4
2008年09月02日00:07
『FORTUNE ARTERIAL』紅瀬桐葉(裏)ルート・3

このエントリは続きものです。
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『FORTUNE・ARTERIAL』紅瀬桐葉(裏)ルート・4

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キャンプ場に着いた俺達は、まずは車から荷物を降ろした。
改めて見ると、全員が両手に抱えてようやく運べるくらいの買い物だった。
そういうわけで、翼ちゃんは名残惜しそうだったが、巨大打ち上げ花火は花火をする時に車から降ろすことにした。

バーベキューのコンロの設置はあっという間に終わり、後は炭を熾して、野菜を切って並べるくらいだ。
白ちゃんと東儀先輩がやって来る3時には、まだ1時間ほど余裕があった。

【かなで】「ねえ、こーへー、薪ってあるの?薪。」

【孝平】「炭ならありますけど、薪はそんなに無いですね。」

【かなで】「えー。それじゃ、キャンプファイヤーできないじゃん。
焚き火を囲んでお話しするのがキャンプの醍醐味なのにー。」

【孝平】「それなら、薪を探しに行きましょうか。
落ちてる枝とかは自由に薪にして良いってフロントの人が言ってましたよ。」

【かなで】「よし、こーへー。
それじゃー薪を探しに参るぞ。お供を申し付ける。」

バーベキューの準備はもうそんなに人数は要らないようだ。
陽菜も行きたいというので、3人で薪を探しに行く事にした。
バーベキューの準備もちょうど3人で男手も一人。組み分けとしては良いかもしれない。
司、翼ちゃん、桐葉にバーベキューの準備をお願いして、俺と陽菜とかなでさんは薪探しに出発した。

俺はフロントで借りた一輪車を押しながら、かなでさんと陽菜の後について歩く。

日差しは強いが、風が気持ちよくて、割と涼しく感じる。
陽菜の髪が、時々森からの風になびいていた。
三人で一緒に過ごす時間が、ずいぶん、懐かしい。
それだけ、学院時代が遠い昔になっているのだ。

まだ卒業してから半年しか経っていない。
だが、それぞれの人生は、あの頃を分岐点として少しずつ、確実に離れて行っているのだ。

懐かしく感じるからこそ、二人を遠くに感じる気がした。
もう、学院時代とは違う・・・
当たり前の事実が、急に実体を持ったような気がした。

【陽菜】「幸平君、桐葉さんとはうまくいってる?」

【孝平】「うん、まあ、ボチボチかな。
仲良くはしてるよ。」

【陽菜】「よかった。私ね、時々お茶を飲んでる時、お茶会の事を思い出して、お茶会メンバーのみんなが元気にしてるかなって心配になるんだ。
お姉ちゃんとはいつも連絡してるけど、孝平君や八幡平君、白ちゃんとは今回の同窓会で久しぶりにメールとかしたなあ。」

【孝平】「陽菜もそうだと思うけど、みんな忙しそうだからね。オレと桐葉が一番暇かもしれない。」

【陽菜】「本当に、寂しくなるものなんだね。
私ね、みんなと会える日がずっと続くような気がしてた。学院時代って本当に幸せだったんだなって、私よく思うの。」

陽菜は、俺と同じような事を感じていた。
言葉にされると、それがはっきりわかる。
学院というゲームは、もう終わっているのだ。
今、俺達に残されたのは、寂しさだけなのかもしれない。


それを聞いてたかなでさんが、母親のような優しい声で陽菜に話しかける。

【かなで】「まあまあ、ひなちゃん、そう暗くならないで。
寂しいからこそ、こうやって会える時間が貴重なんだよ。
大事にしなきゃって思えるんだよ。
それに、また新しい友達だって出来るんだから。
人生に出会いと別れはつきものなんだよ。
陽菜ちゃんがそんな風に言ってたら、孝平が心配しちゃうよ。」

学院時代、何度となくかなでさんに救われた。その元気と優しさに助けられた。
今もそうだ。
かなでさん。ありがとう。


【陽菜】「うんうん。そうだね、お姉ちゃん。
ごめんね、孝平君。私、頑張るね。」

【孝平】「陽菜。俺の方こそ、頑張るよ。」



【かなで】「おお、これは見事な薪ですな。さすが、いい仕事してますねー。
はい、こーへー。これ、お願いね。」

俺は薪を受け取って、一輪車に入れる。
薪はだいぶ貯まってきた。
そろそろ、帰ってもいいかもしれない。時間もそろそろ頃合いだ。

そう思った時、陽菜が何かを見つけて、俺に話しかけてきた。

【陽菜】「ねえ、孝平君、あれってなんだろ?」

陽菜の指差す先。
そこは、立ち入り禁止の札が立ててあり、黄色と黒の縞のロープが張ってある場所だった。

キャンプ場のフロントで最初に説明を受けたのだが、2週間くらい前の大雨で、少し土砂崩れが起きた場所だと言われた。
正確にはキャンプ場の敷地ではなく、どこが管理するか曖昧になっているため、立ち入り禁止区域にして放置してあるらしい。
また崩れる危険性があるので、近寄らないように説明されてた。

俺は陽菜とかなでさんに、そう説明した。

【陽菜】「そうじゃなくて、あそこで何か光ってるの。」

【孝平】「え、どこ?・・・そうかなあ?」

俺には陽菜の言う光は、見えなかった。

【陽菜】「絶対光ってるよ。私、行ってみる。」

【かなで】「あ、ひなちゃん、ダメだよ。孝平の話聞いてたでしょ!」

陽菜は、かなでさんの制止を聞かずに、走り出した。
かなでさんが陽菜を追いかけて走り出す。
俺は薪が満載された一輪車を押しながら、えっちらおっちら、それに続いた。

一輪車を押しながら、俺は嫌な感じがした。
陽菜は、人の制止を振り切って、こういう事をするヤツじゃない。
何かが陽菜をそうさせているのかもしれない。

俺は一輪車をその場に置いて、走り出した。

陽菜は、立ち入り禁止の札のところに、もう、たどり着いている。
そして陽菜は・・・
驚く事に、黄色と黒の縞のロープをくぐろうとしていた。

普段の陽菜の行動とのあまりのギャップに、胸の鼓動が早まる。
陽菜がくぐり抜けようとするロープが、日常とそうでない世界を分ける境界のような気がした。

陽菜、そこを越えてはいけない・・・。

だが、俺の心の叫びも空しく、陽菜はロープをくぐった。
そして、崩れた土砂の前にしゃがみこむ。

なんだ?

俺は、陽菜の目の前の土砂の中に、緑色に輝く光を見た。

緑色の石?

陽菜はその光に、右手を伸ばした。
陽菜の右手が緑色の光に触れた瞬間、陽菜の体はまぶしい白い光に包まれた。
陽菜の体が、そのまま後ろに傾く。

【かなで】「ひなちゃん!」

かなでさんもオレと同じ光景を見たようだ。
かなでさんは、陽菜に向かって叫び、ロープをくぐって、そして、陽菜の体を抱きかかえた。

【かなで】「ひなちゃん、大丈夫?」

【陽菜】「おねえちゃん・・・うん、大丈夫。」

俺もロープをくぐり、二人のそばに立った。

陽菜は・・・涙を流していた。

何が起きたのか。わからない。

【孝平】「陽菜、大丈夫か?
体が光ったような気がしたんだけど、感電とかじゃないよな?
どこか、痛いとことか無いか?」

陽菜は、かなでさんの手から離れて立ち上がった。
そして、ハンカチで涙をぬぐい、ゆっくりと話し出した。

【陽菜】「大丈夫だよ、孝平君。
今はちょっと、混乱してるだけ。
落ち着いたら、何があったか、話すよ。
今は、みんなのところに、戻ろう。」

【孝平】「緑色の石みたいなのが見えたんだけど、それが爆発したりしてないよな。」

陽菜は、右手に持っていたそれを見せてくれた。
緑色の石だ。
珠というのだろうか、深く透き通ったような、磨きこまれたような輝く石だった。
どことなく、懐かしい感じのする、石だった。

【かなで】「ひなちゃん、本当に大丈夫なんだね?」

【陽菜】「うん、大丈夫だよ、お姉ちゃん。心配要らないよ。」

【かなで】「ひなちゃんがそう言うなら、孝平、一旦みんなのところに帰ろう。」


俺達3人は、ロープをもう一度くぐって立ち入り禁止区域を出た。
俺は一輪車を押し、歩き始めた陽菜とかなでさんの後に続く。

陽菜の足取りはしっかりとしている。

一体何が起こったのだろう。
あの石が関係している事は間違いない。
そして陽菜は、何が起きたかが、なんとなくわかっているようだ。

− 今はちょっと、混乱してるだけ −

陽菜は、確かに、そう言った。
陽菜の中で何が起きているのか。
俺は、陽菜が語ってくれるのを待つしかなかった。



『FORTUNE・ARTERIAL』紅瀬桐葉(裏)ルート・5